VB.NETでもXMLを扱いたい(その4)
はじめに
無駄にダラダラ書いているこのシリーズですが、今回は『どうやって』ではなく『なぜ』XMLを扱うのか考えてみました。
CSV、INI
XMLと他の形式とで何が嬉しいのかを考えてみました。
比較して良いのか分かりませんが、まずはみんな大好きini
形式とcsv
形式との比較です。
ini
形式はいわゆるKey-Valueペアを保持する形式です。
この項目にはこの値を割り当てるという概念で、非ITエンジニアでも(編集させるのはどうかと思うが)比較的理解してもらいやすいです。
また、仕様が単純なので自前で実装する場合も簡単に実装できます。
ただ、大まかな仕様はある程度共通認識としてありますが、細かい実装はアプリケーションによって異なります。 なので、
なんでこのアプリケーションはダブルクォーテーションが使えないのよ(キィィィ
ってこともあるかもしれません。
csv
形式はいわゆるスプレッドシートなどの表をテキストファイルで表現した形式です。
こちらも深く考えなければ(←これ大切)値をカンマで区切るだけのお手軽仕様で自前で簡単に実装できます。
一応RFC 4180で仕様化されていますがあくまでも『Informational』であり、アプリケーション独自の仕様が乱立しており『これに従っていればCSV』というものがありません。
対してXMLは階層型のデータ構造を表現します。木構造と表現しても良いかもしれません。
XML文書としての構文が決められており、csv
のダブルクォーテーションとカンマの関係のようなアプリケーションによって微妙に解釈が異なると言ったことはありません。
また、XMLスキーマやRELAX NG*1でかなり細かく構造を定義でき、また妥当性検証器で妥当かどうかの検証を行うことができます。
適切かどうかは置いておいてini
が保持できるKey-Valueペアやcsv
が保持できる決められた項目がレコードとして連続する形式を保持することができます。
逆にini
やcsv
ではXMLが保持するデータを表すことはできません。
こう書くと
となるかもしれません。
確かに開発リソースを割けるならすべてXMLにするのも悪くはないでしょう。 ただ、単純なKey-ValueペアをXMLで書いたり、限られた二者間で機械的にやり取りする(仕様が二者間で厳密に定義されている開放型ではないシステムで)csvでやり取りされていたデータをスキーマ付きXMLで置き換えるのは無意味と言ってもいいかもしれません。
出来ない訳ではないですが、メリットをほとんど享受できません。
<config> <property key="hoge1" value="fuga1" /> <property key="hoge2" value="fuga2" /> <property key="hoge3" value="fuga3" /> <!-- 以下同様なものがつづく --> </config>
対して、人間が関与する構造化されたデータ構造を定義する場合や、多数でやり取りするデータの場合はメリットを享受できるでしょう。 人間は馬鹿で愚かな存在ですから手で書いた設定ファイルにミスがあるかもしれません。 そのようなミスをあらかじめ定義した構造に沿って検出することができます。 また、多数でやり取りするデータについてもXMLスキーマを用いておかしなフォーマットのデータをあらかじめはじくことができます。
余談ですが、昔独自のフォーマットで定義されたiniの亜種のような設定ファイルを見たことがあります。 単純なiniの実装では表現できないデータ構造を表現しており、実装を見ると『そういう考え方もあるか』と妙に納得したのを覚えています。 ただし実装がかなり素朴で設定ファイル中のスペルミスをしてもエラーが出力されなく、間違いに気づかずに30分ほど悩んだのであれはちょっとなぁといった感じです。
JSON、YAML
まぁ、普通XMLと比較するならこの二つだよねって感じの形式ですね。 ただし、大概は『XMLは冗長』の一言でマウントポジションをとられてボコボコにされるんですけどね。
ちょっと細かいことを言うとXMLはもともとマークアップ言語として設計されましたが、JSON・YAMLはデータのシリアル化を目的として策定されたっぽいです。
なんと言ってもJSON・YAMLのXMLに対する利点は簡潔なことですね。 簡潔で分かりやすい。あぁ、なんて甘美な響きなのでしょう。
しかしながら弊社はあまりJSON・YAMLについて詳しくない。 というか全くと言って良いほど知らないので、JSON・YAMLとXMLの比較はあまりできないです。
JSON・YAMLのスキーマ及びその処理系もあるのはあるみたいなのですが、XMLスキーマで妥当性検証を行っているようなものをJSON・YAMLで置き換えるのは厳しそうです。 むしろ簡潔を旨としてスキーマレスで機械生成されたデータを運用するのが一般的なのでしょうか。
まぁ、わからんことをテキトーに書いてるとそのうちドアにIEDが仕掛けられそうなのでこの辺でやめます。
まとめ
XMLスキーマを用いれば妥当性の検証ができますが、それなりの手間が対価として必要になるのでiniやcsvといった旧来からあるフォーマットを簡単キレイに色あせない形で置き換えることは出来ません。
逆に妥当性の検証を行わなければならない用途ではXMLスキーマで構造を定義するだけで検証は妥当性検証器がやってくれますから妥当性の検証を行わなくてはならない場合においてはXML(スキーマ)はかなり有利です。
弊社は
iniやcsvは単純で古臭い形式だからクソ
や
XMLは冗長で複雑だからクソ
ということ主張したい訳ではありません。 それぞれの形式で利点・欠点があるのでそれぞれの目的に合わせて選択すればいいとおもいます。
むしろどちらかの形式にこだわって単純なKey-ValueペアをXMLで記述してコストだけ増大させたり、上の方で述べたXML(JSON・YAML)で記述すべき階層を持つ形式を無理やりiniで記述することが間違いだと思ってます。
つまるところXMLはiniやcsvを完全に置換する銀の弾丸という訳ではなく、選択肢の一つとして考慮すべきものであるということです。 でもまぁ、csvはともかくiniの場合はキーはタグとして定義できそうなのでXMLで置き換えられそうですけど・・・。
冒頭の『なぜ』XMLを扱うかの答えは、
iniやcsvで表現できない複雑な構造を扱うことが出来、JSON・YAMLと比べてスキーマを定義して妥当性の検証を行うのが(.NETで)楽であるから
というのが弊社の答えです。
*1:リラクシング、今日調べてて初めて存在を知りました。